研究概要 |
極低温イオン-極性分子反応における反応速度測定を目的とした実験装置を新たに開発した。まず、低速極性分子ビーム生成のためのシュタルク分子速度フィルタ-を新規に製作し、実際に低速ND_3, CH_2O, CH_3CNビームの生成に成功した。特に、低速CH_3CNビームの生成は本研究において初めて行われた。低速極性分子ビームの速度分布は飛行時間法により決定し、ピーク速度23~ 40 m/s(換算温度1~ 6 K)を得た。また、極性ガス導入時の圧力値と低速極性分子検出器の信号強度とを比較することにより、反応速度定数の決定に重要な分子数密度nを決定した(n=10^4~ 10^6 cm^<-3>)。以上の準備の後、シュタルク分子速度フィルタ-により生成された低速ND_3, CH_3CNビームと、レーザー冷却法により生成されたCa^+クーロン結晶との極低温イオン-極性分子反応の反応速度測定を行った。得られた反応速度はいずれも10^<-6>~ 10^<-5>/sのオーダーであり、低速ND_3, CH_3CNとCa^+クーロン結晶との反応性が極めて低いことが確認された。本研究の結果は、レーザー冷却されたCa^+イオンとの共同冷却で得られる極低温分子イオンと、シュタルク分子速度フィルタ-によって得られる低速極性分子との反応速度測定が原理的に可能であることを示している。これが本研究の重要な成果である。
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