研究概要 |
(1) マウスES細胞用オンチップ培養観察デバイスの構築 マウスES細胞を顕微鏡上で長期培養するための培養観察デバイスを構築した。ガラスボトムディッシュに、両面テープを介してPDMSのパッドを貼付けるシンプルな構成で、培養液を常に還流しながら細胞を連続観察できるシステムを作った。また、長期観察用に、顕微鏡上でCO2濃度を制御できる簡易インキュベーター装置を作製した。市販の顕微鏡上CO2インキュベーターは定格のため、還流デバイスと組み合わせて用いることはできない。作製した簡易インキュベーターとデバイスを組み合わせることで、マウスES細胞の挙動を少なくとも3日間連続観察できることを確認し、長期1細胞観察の実現へ端緒を開いた。 (2) ES細胞無血清培養系のチップへの実装 ES細胞の分化誘導条件を厳密に制御するには、実験者側から与えた完全既知の環境条件で細胞を観察する必要がある。そのためには、成分既知の無血清培地を利用すること、そしてES細胞の集塊化を防ぐことの2つが必須である。そこで、無血清培地であるESF7培地(Furue, et al. (2005) In Vitro Cell.Dev.Biol.)を用い、これを、E-cadherin-Fcコートした基板表面でES細胞を分散培養する方法(Nagaoka, et al. (2006) PLoS ONE)と組み合わせた。その結果、ESF7を還流し続けながら、上記(1)のデバイス中で、ES細胞を分散状態においたまま、長期観察できることを確認した。細胞の平均成長速度も、Collagen上の場合とほぼ同程度であり、このシステムでES細胞の培養観察が可能であることを確認した。以上の構成により、培養環境の不確定要因を極力除いた状態で細胞観察を実現できると期待される。
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