研究概要 |
本研究は火山噴火の多様性を支配するマグマの脱ガスの効率を定量化し,火山の爆発-非爆発噴火の分岐を支配する要因を明らかにすることを目的としている.今年度は発泡したマグマの変形実験を行い,マグマの脆性破壊に関する研究を進めた.マグマの脆性破壊によって形成されるフラクチャーは,効率的な脱ガス通路となる可能性が指摘されているが,破壊条件やフラクチャーを利用した脱ガス効率については明らかにされていない. 実験を行うにあたり,まずは実験装置の立ち上げを行った.実験装置はメカニカルデータを測定できるピストンシリンダー型の高温高圧ねじり変形実験装置にAEセンサーを取り付けたオリジナルの装置である.AEセンサーは高温部に直接設置することが難しいため,試料と接した金属を室温部分まで伸ばし,そこに固定した.実験は発泡した流紋岩マグマを約700-1000℃の温度,0.01s^<-1>程度の歪速度で変形させて行った.この条件では830℃以下の温度で脆性破壊が確認された.破壊によってマグマ中にはフラクチャーが形成され,その部分は効率的な脱ガスの通路になる可能性が示された.一方で変形は破壊部分に集中するため,フラクチャー周辺以外では効率的に脱ガスが起こるわけではないことが分かった.さらにマグマの脆性破壊に伴って急激なトルクの減少が観察された.これは破壊に伴い破壊面でのスリップが変形を支配するためだと考えられる.さらに750℃程度の実験ではAEイベントが多く観測された.来年度以降,系統的に実験を行い,破壊とAEイベントの関係を明らかにする予定である.
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