研究概要 |
本研究では火山噴火の爆発-非爆発を分岐する要因を明らかにすることを目的とし,その要因の一つであるマグマの脱ガス効率の定量化を行った.昨年度までの研究において,地殻内を減圧されながら上昇するマグマを,実験的に再現し「その場観察」する実験システムを構築した.この装置では,~1000℃の温度,数十MPの圧力条件下でマグマをねじり変形させることが可能であり,この装置を放射光施設SPring-8のビームライン(BL20B2)に設置することで,高温高圧条件下でのマグマの流動をX線透過撮影法やコンピューター断層撮影法を用いて観察することができる.実際に流動するマグマを観察した結果,流動するマグマ中では気泡が効率的に変形・合体することで脱ガス効率が上昇し,脱ガスに伴うマグマの緻密化が起こることで,地表へは低発泡度(高密度)の溶岩が噴出することが分かってきた.一方で,上昇中に均一にマグマが変形すると必ず脱ガスが起こってしまうため,良く発泡したマグマを爆発的に噴出するためには脱ガス効率を低下させる必要がある. 以上のような研究成果を背景に,今年度はマグマが脱ガスせずに上昇し,爆発的噴火を発生するメカニズムを明らかにすることを目的として研究を進めた.上記の実験装置を用いて変形実験を行った結果,低温・高歪速度下でのマグマの変形は局所化し,変形の局所化部分以外の領域ではマグマの変形が抑制されることがわかった.このようなマグマの変形集中によって,脱ガスを経験しない良く発泡したマグマが地表へ噴出できる,つまり爆発的噴火が発生する可能性がある.今後,より精密に火山の爆発-非爆発的噴火の分岐を明らかにするためには,マグマの変形集中の発生要因を制約する必要がある.
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