研究概要 |
日本列島の様な海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む地域では,海洋プレートの沈み込みにともなう温度圧力の上昇に起因する含水鉱物の脱水分解反応により生成したフルイドが,この地域でのマグマの生成に重要な役割を果たしていると考えられている.そこで,高温高圧下でのフルイドの物理化学的性質を理解することが,地球内部での物質循環や沈み込み帯のマグマ生成を解明する上で重要となる.一般に,圧力の増加に伴いマグマ中への水の溶解度は増加し,同時にフルイド中へのケイ酸塩成分の溶解度も急増し,両者の性質は似てくる.そしてある温度圧力条件(第2臨界終端点)以上になるとついには含水マグマとフルイドの区別が無くなり,完全に混和した1相になる.最近の研究により,地球内部物質の第2臨界終端点の温度圧力条件が明らかになってきているが,フルイドやマグマの化学組成に関しては未だ不明な点が多い.本研究ではレーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)という分析方法を使用し,ダイヤモンドアンビル内の高温高圧下のマグマやフルイドの化学組成の直接決定を試みる.初年度である平成21年度は必要な機器を購入し,セットアップを行った.顕微鏡の対物レンズ等の光学系を最適の状態で組み上げ,常温常圧下での鉱物やガラスの微小領城から,確かにレーザー誘起プラズマの信号を得ることに成功した.それと同時に,外熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いて高温高圧下でのフルイド・メルトの相平衡実験を行い,次年度に予定しているLIBSでの高温高圧下での化学組成分析を行うのに最適な実験条件に目星を付けておいた.大変有意義な1年だった.
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