地球内部の高温高圧下では水はケイ酸塩成分を溶解した超臨界流体として存在し,この様な地球内部の超臨界流体は一般にフルイドと呼ばれる.日本列島の様な沈み込み帯では,海洋プレートから放出されるフルイドがマグマの生成に重要な役割を果たすと考えられている.そこで,高温高圧下でのフルイドの物理化学的性質を理解することが重要である. 一般に,圧力の増加に伴いマグマ中への水の溶解度は増加し,同時にフルイド中へのケイ酸塩成分の溶解度も急増し,両者の性質は似てくる.ある温度圧力条件(第2臨界終端点)以上になると含水マグマとフルイドの区別が無くなり,完全に混和した超臨界流体マグマになる.本年度は主に,ペリドタイト+H2O(+-CO2),玄武岩+H2O系等における第2臨界終端点の温度圧力条件の決定及び,レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を使用したダイヤモンドアンビル内の高温高圧状態のフルイドやマグマの化学組成の直接決定の研究を行った. 第2臨界終端点の決定は,西播磨の大型放射光施設(スプリングエイト)を用いて行われた.高温高圧X線ラジオグラフィー法をによりメルトとフルイドの安定領域を調べ,第2臨界終端点を決定することに成功した.この結果は沈み込み帯のスラブからの脱水やスラブ溶融,マントルウェッジでのマグマの生成等を議論する上で重要であり,成果はアメリカ科学アカデミー紀要に発表された. フルイドの化学組成決定に使用するLIBS装置は,ダブルのパルスレーザー,分光器,ゲート機能付きのイメージインテンシファイヤCCD検出器及び,光学系から成る.本年度は主に,サンプルのプラズマ化の再現性を良くするために,装置の改良を行った.レーザー光路にシャッターを設置し,必要なタイミングでのみサンプルをプラズマ化することができる様になった.これにより得られる信号の再現性が向上した.
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