研究概要 |
マグマ中では珪素,アルミニウム,チタンなどが4つの酸素と結びついて四面体を作っており,この四面体のネットワークを基本構造としている.マグマは水や二酸化炭素などの揮発性成分が溶け込むことによって構造が変わると考えられている.この構造変化によって粘度や密度といった物性も変わると考えられているが,高圧高温下で揮発性成分が物性や構造にどの様な変化をもたらすかについてはよく分かっていない.また,一般にマグマは地球深部の高圧高温下で生成して地表へと噴出するが,条件によっては地球深部に留まって噴出しないものもある.このため,高圧高温下でマグマを調べることはマグマの生成と移動を考える上で重要である.同様に,地球以外の惑星・衛星についてもマグマの物性は火山活動に関する議論に役立つ. 今年度は茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の放射光実験施設(フォトンファクトリー)において,大容量マルチアンビル型高圧発生装置MAX-IIIとX線イメージングシステムを使用してマグマ(珪酸塩メルト)の粘度測定などを行った.粘度はX線イメージングによる高圧高温下でのその場観察落球法で測定した.特に着目したのはチタンの影響で,月の高チタンマグマおよびチタンを含む珪酸塩メルトの粘度を5GPaまでの圧力下で測定した.その結果,メルト中でのチタンの配位数変化に対応して,粘度が変化することが明らかになった.
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