研究概要 |
マグマの粘度は地球内部におけるマグマの移動をコントロールする.特にマグマではSi04やAl04のネットワークの連結の度合いが粘度に強く影響する.このネットワークはマグマの組成,温度,圧力および揮発性成分量で変わるため,様々な条件下で粘度を測定してこれらが粘度にどの様な影響を調べることは重要である.しかしながら,高圧力下での粘度測定は多くが2GPa以下の比較的低圧下で行われており,それ以上の圧力下についてはよく分かっていない.実験は高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の放射光実験施設PF-ARにあるNE7Aステーションで行った。ここには大型プレスMAX-IIIが殻置されており,本研究課題の予算で用意したX線ラジオグラフィー装置を取り付けることができる。本研究ではX線ラジオグラフィー落球法で粘度測定を行った。落球法とは、試料容器内に装填した金属球が液体中を落下する速度を測定して粘度を求める方法である。本研究では高圧セル内部の試料容器をX線ラジオグラフィー装置を用いて高温高圧下で「その場観察」しながら落球粘度測定を行った。この方法を用いると、従来の方法より低粘度の液体の測定が可能であり、本研究の対象である揮発性成分を含んだマグマの実験には最適の方法である。特に輝石の端成分であるNaAlSi206とCaMgSi206組成のメルトに着目し,これらに地球内部の揮発性成分として重要な二酸化炭素を加え,5GPaまでの圧力下で粘度測定を行った.本研究の結果,二酸化炭素の溶解による粘度減少が観察された.また,重合との違いによって粘度減少の程度が異なることが明らかとなった.これは,珪酸塩メルトの組成に応じて二酸化炭素の溶け込む形が異なり,構造に与える影響が異なるため粘度に違いが出たと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
揮発性成分を加えたマグマ(珪酸塩メルト)の粘度測定は,技術的に困難であるため,殆ど行われてこなかったが,この科研費で用意したX線イメージング装置を用いることで,高圧高温下でのX線イメージング落球法による粘度測定が可能になった.
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