研究課題
地球内部で発生するマグマには,多かれ少なかれ揮発性成分が含まれる.マグマに揮発性成分が溶け込むことによりマグマの物性が変化し,例えば密度は低下する.一方,マグマのもう一つの重要な物理量である粘度については,高圧力下での実験的研究はあまり行われておらず,不明な点が多かった.本研究では特に二酸化炭素に着目し,マグマの粘度に与える影響を調べた.ヒスイ輝石(NaAlSi2O6)組成のマグマ(珪酸塩メルト)は常圧下で(Si,Al)O4ネットワーク重合度の高い構造を持っている.このメルトの粘度を高圧力下で測定すると,圧力の増加とともに粘度が低下することが分かっていた.本研究では広範な温度圧力下で粘度測定を行い,2.5GPa付近で粘度の減少が停止し,さらなる高圧力下では粘度が殆ど変化しないことが分かった.いっぽう,粘度の温度依存性は実験の圧力範囲内で,常圧下での値と殆ど変化しないことが示された.このヒスイ輝石組成のメルトに二酸化炭素を加えると,0.5 wt%程度の添加でおよそ1桁の粘度減少が認められた.一方,透輝石(CaMgSi2O6)は,ヒスイ輝石と同じく結晶では輝石の構造だが,この組成のメルトは常圧下で重合度が低い.このメルトの粘度は圧力の増加とともに増加するが,我々によるX線その場観察落球法による測定の結果,従来行われた急冷法による測定と較べて,圧力の増加に伴う粘度増加の割合が非常に小さいことが分かった.ただし,正の勾配を持つ点は一致している.さて,この透輝石組成のメルトに二酸化炭素を加えた場合,粘度減少の割合はヒスイ輝石と較べて大幅に小さいことが分かった.粘度減少に違いがあるということは,すなわち,二酸化炭素が珪酸塩メルトの構造に与える影響が重合度によって異なることがわかる.これは,モデル玄武岩組成を用いた我々の結果とも調和的である.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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