研究概要 |
本研究課題の目的は,イオン液体における分子間振動ダイナミクスを通してイオン液体の微視的分子間相互作用や構造を詳細に検討することである。凝縮相の分子間振動バンドは低振動数領域(約50cm-1以下の領域)に現れるため,低振動数領域の分光手法を使う必要がある。本研究では,単一のレーザー光源を用いたものとしては世界最高レベルの観測領域と信号感度を持つフェムト秒ラマン誘起カー効果分光装置を作成することに成功し,イオン液体に現れる分子間振動バンドについて分子レベルでの解釈を与えることができた。特に,(1)非芳香族性イオン液体と芳香族性イオン液体の相違,(2)重原子置換効果の一般性(カチオンとアニオン、芳香族と非芳香族など),(3)イオン液体と分子液体との相違,(4)ジカチオン型イオン液体の特異性,について新しい知見を得ることに成功し,これらについて書籍の1章(IonicLiquids:Theory,Properties,NewApproaches,Chapter9)および総説(ChemPhysChem,2012,13,1638.VIP(VeryImportantPaper)に選定)にまとめることができた。また,この研究課題に関連して,国内外のグループとの共同研究に発展した。
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