研究概要 |
オプトエレクトロニクスデバイスへの利用を睨んで、発光性シリコンナノクラスターに関する研究が盛んに行われている。発光波長が制御されたシリコン発光素子を創成するためには、構成原子数や化学組成が厳密に制御されたシリコンナノクラスターを合成する技術が必要となるが、これまで報告のある調製法では構成原子数や化学組成に分布をもつ混合物しか得ることができない。本研究では、フェニル基により保護されたシリコンクラスター(Si:Ph)を対象に、それらを高分解能で分離することに取り組んだ。クラスターは液相法にて合成した。得られたクラスター混合物を高分解能サイズ排除カラム(分子量分画範囲:500-20,000)に通してみたところ、クロマトグラムには5つの明確なピークが観測された。各々の成分を分離し、その紫外可視吸収スペクトルを測定してみたところ、各々はそれぞれ紫外領域にて異なる吸収を示すことが分かった。このことはサイズ排除カラムにより、Si:Phが高分解能で分離されたことを示している。スペクトルの形状や沸点などから、保持時間の短い4つ成分がSi:Phであり、保持時間の最も長い成分は洗浄し切れていない有機分子であることが分かった。4つの成分についてはカラムの特性を考慮にいれると、保持時間の順にサイズが連続的に小さくなっていると解釈される。すなわち、保持時間の最も長いクラスターが最も小さなサイズのクラスターであると考えられる。4つの成分の蛍光スペクトル上を測定したところ、サイズの減少に伴って、クラスターの発光ピークが連続的にブルーシフトする様子が観測された。このことはサイズの減少に伴い、クラスター内の電子状態が離散化しバンドギャップが連続的に増大していることを強く示唆している。今後は質量分析により、4つの成分の化学組成を特定することで、シリコンナノクラスターにおける組成と発光波長の相関についてより深く理解することを目指す。
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