研究概要 |
可視領域において強い発光を示すシリコンクラスターは、次世代のオプトエレクトロニクスデバイスとして大きな注目を集め、盛んに研究が行われている。しかしながら、その発光メカニズムに対しては、サイズ減少に伴う量子サイズ効果や、表面酸化物など、複数の提案がなされており、決定的な結論が得られていない。その大きな原因の一つとして生成物の化学組成が決定されていないことが挙げられる。本研究では、可視発光を示す1.5nmの粒径をもつアルキル基によって保護されたシリコンクラスターを合成し、得られたクラスターに対して質量分析法による化学組成の評価を検討した。ヘキシル基保護シリコンクラスターは液相法により合成した。生成物の透過型電子顕微鏡観測や赤外吸収スペクトルより、生成物がヘキシル基で保護されたシリコンクラスターであることが確認された。得られたクラスターに対して様々なマトリックスを用いてマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析を行った結果、マトリックスとしてDCTBを用いたときが最もイオン強度が高く、非破壊的な質量スペクトルが得られた。これは、DCTBの吸光係数が使用した他のマトリックスよりも高いため、クラスターの光吸収に伴う解離パスをDCTBが防いだためであると解釈した。質量スペクトル中にはSi_<46>(C_6H_<13>)_<41>、Si_<49>(C_6H_<13>)_<47>、Si_<58>(C_6H_<13>)_<51>の質量に相当する位置にピークが観測された。これらの組成を元に計算したクラスターの粒径はTEM観察による平均粒径の結果とほぼ一致した。このことは、質量スペクトル中の各ピークがシリコンクラスター由来のものであることを示している。以上の結果を元に、合成したシリコンクラスターの化学組成をSi_<46>(C_6H_<13>)_<41>, Si_<49>(C_6H_<13>)_<47>, Si_<58>(C_6H_<13>)_<51>と帰属することができた。
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