レポーター遺伝子ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)および分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)を含むプラスミドベクター導入細胞系で、核酸-タンパク質同時定量法を確立した。1細胞レベルでのmRNAコピー数は、内在性ハウスキーピング遺伝子(gapdh)、ゲノムDNAに挿入されたルシフェラーゼ(Luc-stable)、および一過性導入ルシフェラーゼ(pLuc)のすべてにおいて対数正規分布に従うことが明らかとなった。F検定により、Luc-stableとgapdhは等分散、pLucとgapdhは等分散でないことが分かった。無細胞サンプルから回収した核酸の分布は1細胞分析の分散と比べ有意に小さく、回収工程やPCRを含む実験系の誤差とは明確に分離することが可能であった。1細胞ごとのタンパク質発現量を発光、蛍光および電気化学イメージング法により定量し、対数正規分布に従うことを確認した。またmRNAとタンパク質の発現量を比較した。例えばlog(Luc mRNA)とlog(Luc Protein)間の相関係数は0.35であり、log(gapdhc mRNA)とlog(Luc Protein)間の相関係数-0.15と比べると明らかに大きな値を示すが、1.00からは大きく逸脱している。同様の結果をGFPおよびSEAP発現系でもすることができた。このようなmRNAおよびタンパク質発現量のゆらぎは1細胞レベルの転写-翻訳システムの本質的性質であることが示唆された。 リング電極プローブを用いて、ITO電極上に播種した細胞の中から任意の1細胞を電場破砕しmRNAを定量した。複数種類のハウスキーピング遺伝子に関して、大量細胞系と1細胞系で細胞あたりのmRNAコピー数を比較し良好な一致が得られ、我々の1細胞定量法の妥当性が示された。これに対し、損傷回復モデルでは細胞の場所や培地組成により1細胞レベルの遺伝子発現が、大量細胞系と異なることが示唆された。ヒドロキシウレアを用いる同調培養系で複数種類のハウスキーピング遺伝子およびサイクリン遺伝子を1細胞レベルで検出することに成功した。ビーズを担体とするPCRを検討し、~1000コピー/cellの遺伝子を検出可能であることを確認した。
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