研究概要 |
可搬型マルチターン飛行時間型質量分析計(MULTUM)に組込む小型イオン源の開発と,MULTUMを屋外に持ち出すための検討を目的とし,本年度は以下の項目について研究・開発を行った. 1.簡易的なガスクロマトグラフで現場において分析する手法の開発 本格的なガスクロマトグラフ(GC)でなく,小型のGCで数分以内の短時間の保持時間で簡易分離してマルチターン飛行時間型質量分析計(MULTUM)で質量分析を行えるシステムを構築し,評価した.医療現場向けには,血中の代謝物を網羅的に解析するための手法の確立と評価を行った.また環境モニタリング向けには,土壌から発生する大気レベルの濃度(200ppb)の亜酸化窒素を1分間隔で測定できるシステムを構築し,従来法と比較して評価した. 2.表面に付着した化学物質を脱離イオン化させる手法の開発 昨年度に引き続き,バリア放電イオン源と直交排出リニアイオントラップならびにMULTUMを接続したシステムの評価と,装置全体の性能評価ならびに改良を行った.MULTUMとの接続により,質量分解能1万以上で爆発物や風邪薬の成分の分析が可能であることを示した. 3.装置の小型化・低消費電力化 昨年に引き続き,電源のさらなる小型化,消費電力の低減を行った.大きさは当初の1/2程度,消費電力は1/4程度にすることができた.300Whの家庭用エネルギーサーバーで1時間以上の駆動が可能であることを確認した.また,制御ソフトウェアについては,全面的に見直したものを試作した.
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