本研究では、芳香環としてアントラセン環を選択し、キサンテン骨格に配置することで、アントラセン環積層オリゴマーならびにポリマーの合成に成功した。これらは基底状態においてアントラセン同士がπ-π相互作用することが明らかになった。また、蛍光発光スペクトルおよび蛍光寿命測定において、アントラセンのエキシマー発光が観測されたことから、励起状態においてもアントラセン同士がπ-π相互作用することが分かった。 パラジウム錯体を触媒とするクロスカップリング反応を駆使することにより、キサンテン骨格にビチオフェン、ターチオフェン、クアトロチオフェン、キンケチオフェンを積層したオリゴチオフェン積層高分子の合成に成功した。得られたポリマーの最高非占軌道(HOMO)のエネルギー準位はおよそ-5.0eVと見積もられた。本ポリマーは優れた成膜性も有し、熱的にも非常に安定であることから、正孔輸送材料等の有機電子デバイスへの応用展開が可能である。 また、キサンテン以外の土台骨格として、ナフタレン骨格を利用し、より近距離で芳香環が積層するようなπ-スタック型高分子の合成を試みた結果、ビチオフェン、ターチオフェン、クアトロチオフェン積層高分子の合成に成功し、オリゴマー同士がナフタレン上で相互作用することを示した。
|