直径の比較的大きな単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を構造分離することができる高分子ラッピング法の開発をおこなった。これまで直径1.3nm以上のSWCNTに対して構造分離が可能な高分子は報告例がなかったが、本研究によって直径約1.4nmのSWCNTを効率よく抽出するフルオレン系高分子を見出した。また、当該フルオレン系高分子の電子構造と抽出できるSWCNTの電子構造の間に関連性を見出した。現在のところ詳細は不明であるが、高分子ラッピング法による抽出メカニズムの解明に非常に重要な知見であると考えている。さらなる分光測定実験や物性理論による解析により、その本質に迫る予定である。 さらに、構造選別された機能性SWCNT材料開発のための予備実験として、蛍光分子を構造未選別のSWCNTに内包し、内包分子からの蛍光寿命測定などの物性測定をおこなった。その結果によると、蛍光分子はSWCNT中で1次元配列構造をとっており、その1次元性に起因した物性を発現している可能性が高いことがわかった。つまり、分子や単結晶とは異なる物理現象が期待され、非常に興味深い。また、他の蛍光分子についても同様の実験をおこなったところ、SWCNTの直径に依存して、内包された分子の配列構造が変化し、それを反映した蛍光スペクトルおよび蛍光寿命を持つことがわかった。 また、n型半導体特性を示すと報告されているアザフラーレンを内包したSWCNTの物性を調べたところ、観測されたn型特性はドープされたSWCNTそのものの特性ではなく、トランジスタ構造に起因するものであることを示唆する結果を得た。
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