研究概要 |
電極表面と電解液界面で形成される電気二重層を電荷蓄積に利用する電気二重層キャパシタは,高い出力密度や半永久的な寿命といった特長を有するエネルギー蓄積素子である。大容量化のためには界面の増加(高比表面積化,多孔性制御)が重要である。本研究では新たなナノカーボンとして注目されているグラフェン電極を用いた電気二重層キャパシタの創製を実現するための製造技術を検討する。平成21年度までに,バルク再積層体を対象に,グラフェンのサイズや還元方法と電極特性の関係性を検討した。平成22年度は強固なリスタックを抑制する目的で,再積層グラフェンの層間に導電性ナノ粒子を導入し,物質拡散の変化を明らかにした。さらに,バルク再積層体で得られた知見を超薄膜へ展開させた。静電的自己組織化による交互積層膜を創製し,1層~数層の酸化グラファイトナノシート,部分還元酸化グラファイト,グラフェン薄膜の容量性を検討した。グラフェン間に絶縁性のポリカチオンが存在していても交互積層膜は電荷蓄積能を有し,薄膜キャパシタへの展開が可能であること,積層数と蓄積可能な最大容量には比例関係があり,精密な制御が可能であることを明らかにした。また,ポリカチオン存在下での還元方法も種々検討し,ヒドラジンを用いた液相還元よりも,水素ガスによる還元(200℃程度)の方が,高容量が得られることがわかった。表面官能基の残存量が容量性と大きく関係していると考えられる。すなわち,適度な量の含酸素官能基を残すことで,グラフェンシートと水系電解液との親和性を高め,強固なリスタックを防ぎ,疑似容量も付与されると考えられる。
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