研究概要 |
本研究は従来の化学的な材料開発手法に代わり、あらたに電場誘起によるキャリアドーピングという電気的な手法による新規超伝導材料の開発を目指すものである。前年度までに新規超伝導体KTaO_3を発見し、その超伝導物性の詳細を明らかにするとともにSrTiO_3をモデル材料として電気二重層トランジスタの性能向上を行ってきた。本年度は新たにp型材料へ研究を拡大すべくp型単結晶半導体CuScO_2の薄膜作製を行い、物性評価を進めた。また、研究代表者の東京大学への異動に伴い、本研究課題で購入した備品の移転を行うとともに、室温付近から0.3K付近の極低温まで輸送特性、デバイス特性の評価が可能な測定系の開発・立ち上げを行った。 半導体には電子がキャリアとなるn型半導体とホールがキャリアとなるp型半導体があり、SrTiO_3,KTaO_3,ZnOなど多くの酸化物半導体は金属のd軌道が伝導を担うn型半導体である。一方、銅酸化物系高温超伝導体のの母物質はp型伝導を示すことが知られている。我々はあらたな研究対象としてp型伝導を示す透明酸化物半導体であるCuScO_2に着目し、薄膜の開発を行った。熱平衡に近い状況での結晶成長による薄膜の高品質化を目指し、パルスレーザー堆積法にフラックス法を組み合わせた三相エピタキシー法により薄膜を作成した。薄膜をX線回折法、および透過型電子顕微鏡を用いて評価したところ、膜内に欠陥構造がほとんど見られず非常に高品質な薄膜であった。一方、単結晶一つの大きさが数十マイクロメートルと小さいために現在のデバイス作成技術では電気二重層トランジスタの作製が困難という問題が残されている。今陵、薄膜作製法の改善、もしくは新たなデバイス作成手法によってこの材料で電気二重層トランジスタを作成、p型半導体での電場誘起超伝導を目指していく。
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