本年度は、ユニバーサルSPMコントローラを導入し、全く新規にチューニングフォークを用いたAFMを構築した。AFM像の取得が可能な段階に来ているが、今後さらなるノイズ対策を必要とする。一方、分光システムとして、まず紫外域に関して、既設のピコ秒グリーンレーザーの2倍波(266nm)及びDUVアルゴンイオンレーザーを活用し、DUVラマン分光顕微鏡を構築した。種々のアミノ酸、DNA、細胞などについてデータ取得・評価を行った。近赤外域に関しては、超短広帯域パルスレーザーを用いることで、非線形分光法(広帯域CARS)の実験を行い、オシレータのみで広帯域CARSを実現した。また、同レーザー光の振幅・偏光・位相をコントロールする光学系の設計・最適化を行った。これらの近赤外レーザー分光システムも今後、上記のSPMへの導入を行う。また、可視域に関しては、既存の近接場顕微級を用いることで、局所的に近接場領域で生じる温度上昇の効果がラマン分光などの近接場計測に及ぼす影響の評価を行った。具体的には、近接場金属プローブに光照射を行うと、有限要素法による計算から、照射強度に依存して、1000K程度までプローブ先端の温度が上昇することがわかり、実験的にも先端温度の評価を行いよい一致をみた。今後、この局所的な温度の効果を用いた、空間分解能の向上や近接場での電場増強効果への影響などを検討する。これらの検討は、既存の可視近接場顕微鏡を用いたものであるが、今後紫外域・近赤外一赤外などの波長域にも生かされるものである。一方、この熱源を用いた一つのアプリーケーションとして、ナノ加工を提案し、カーボンナノチューブを局所的に切断できることを示した。本成果は論文としてアクセプトされるに至っている。
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