本研究は有機薄膜太陽電池の性能劣化解析と高耐久化を目的としている。これまでの研究成果で、性能低下に起因する箇所が、(1)電子捕集層として用いている酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型半導体と有機発電層の界面劣化、(2)有機発電層中の電荷分離界面の減少であることが分かってきた。そこで、今年度はこれまでの知見を基に、素子の改善を行い、1000時間の光連続駆動に耐える有機薄膜太陽電池の開発を目指した。逆型有機薄膜太陽電池(TCO/n型半導体/PCBM:P3HT/PEDOT:PSS/Au素子)に対して、発電層に用いる材料および溶媒、n型半導体層の種類の組み合わせにより長寿命素子の開発を行った。化学浴析出法により作製したアモルファス酸化チタン薄膜の表面吸着水の除去および製膜時の水分濃度を制御することにより、この酸化チタン薄膜を電子捕集層に用いた逆構造素子(ITO/TiOx/PcBM:P3HT/PEDOT:PSS/Au素子:TiOx素子)において、未封止・大気中で100時間の太陽擬似光連続曝露でもほとんど性能(効率保持率94.0%)が劣化しない高耐久素子の開発にも成功した。また、ゾルゲル法により作製した酸化亜鉛薄膜を電子捕集層に用いた逆構造素子においても(ITO/ZnO/PCBM:P3HT/PEDOT:PSS/Au素子:ZnO素子)同様に封止・大気中で100時間の太陽擬似光連続曝露でもほとんど性能劣化がない(効率保持率95.6%)ことが分かった。さらにTiOx素子を封止することによって、フィールド試験において1年以上の連続駆動において95%以上の性能保持が確認できた。
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