研究概要 |
本年度は,固体フッ素樹脂原料の連続供給・冷却機能を具備したプラズマ処理装置を設計・製作した.製作した装置のプラズマ駆動電源には,汎用性の観点から13.56MHzを採用し,最大1KWの投入が可能となっており,また処理面積の大面積化を考慮してXYステージを搭載した装置システムを構築した.設計製作したプラズマ装置を用いて,幅10cm,長さ約2cmにわたり安定な大気圧近傍のプラズマを発生させることに成功した,また固体フッ素原料としてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂を採用し,PTFE表面とプラズマの反応により生じる生成分子種を同定するため,フーリエ変換赤外吸収分光法によりガス分析を行った.その結果,プラズマ雰囲気を希ガスのみで構成した場合には,PTFE表面から生成されるガス種は,フルオロカーボン系のガスのみであり,とりわけCF_4の生成が認められた.一方,プラズマ雰囲気中に酸素を混合した場合,PTFEから生成されるガスの主成分は,COF_2であることが分かった.また雰囲気への酸素添加によりPTFE表面からの反応ガスの生成量が飛躍的に増大することが明らかになった.この増大傾向は,プラズマへの投入電力が小さい時ほど顕著であった.生成が確認されたCOF_2は,Siのエッチングガスとして利用可能であり,CF_4に比べて格段に地球温暖化係数(GWP係数)が低いため,酸素添加によりGWP係数の低いエッチャントガスを,より効率的に生成できるということが分かった.一方,水素をプラズマ雰囲気中に混合した場合には,PTFE表面からのF引き抜き反応が予想される分析結果を得た.
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