研究概要 |
翼・翼列のキャビテーション流れにおける非定常流動構造を解明し,現象を定量的に再現可能なキャビテーションCFD(数値流体力学)モデルを考案することを最終目標に,本年度は(1)単独翼周りのキャビテーション流れ計測を実施してキャビティの非定常挙動との関係を明らかにするとともに,(2)CFD解析の問題点を抽出しその改善法の検討を行った. (1)単独翼のキャビテーション流動計測 単独Clark Y翼形の翼特性とキャビティの非定常挙動との関係をレーザードップラー流速計測および油膜法により調査した.その結果,迎え角8°でキャビティが翼より短い部分キャビティ状態においては,キャビティ前縁近傍では速度場の非定常性は小さいこと,キャビティが最大厚みを有する位置から下流では,大きな渦構造を伴うクラウドキャビティの放出により速度場の非定常性が増加し速度欠損域の厚みも激増するこどが分かった.また,キャビティの成長に伴い翼の後流の速度欠損域が拡大し非定常性が増大するのに対し,上流では大きな体積変動を伴う遷移キャビティ状態においても速度変動が小さいことが確認された. (2)キャビテーションCFD解析の問題点抽出と改善法の検討 蒸発・凝縮を場の圧力と飽和蒸気圧の差とモデル係数で考慮するKuntzモデルを用いたCFD解析を実施した.その結果,蒸発係数がキャビテーション領域の圧力場に寄与すること,凝縮係数がキャビティの後流の圧力場に寄与することが分かったものの,予測精度は定量的には不十分であった.また,キャビティの内部はミスト流,外部は気泡流と考え,キャビティの内部で乱流粘性を縮減するモデルを構築したところ,定量的にはまだ不十分であるものの非定常挙動は実験観察に近づくことが分かった.以上のことから,キャビティ後縁の非定常性とそれに伴う圧力分布を実現するモデルの構築が必要であると判断された.
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