研究概要 |
本研究では,分子動力学(MD)法解析により,触媒金属微粒子内の結晶方位及び局所融解状態の分布がカーボンナノチューブカイラリティ決定にどのように影響を与えているかを解明し,カーボンナノチューブカイラリティ制御触媒金属微粒子の最適構造設計を行うことを目的としている.平成22年度は,グラファイトと触媒金属表面の方位関係(エピタキシー)に着目し,様々な方位関係を有する金属表面と炭素原子のポテンシャルエネルギー表面(PES)を計算し,体心立法格子の稠密面上PESの再安定位置が六角格子上に分布し,かつ再安定位置間距離が炭素共有結合の結合距離と近いことを確認した.これらの結果を,同分野の研究動向と併せたレビュー記事を雑誌「Diamond and related materials」に発表した.また,金属微粒子安定相の冷却速度依存性を系統的に計算し,冷却速度により,ガラス状,多結晶,単結晶微粒子と状態が変化することを確認した.また,これらの結果を連続冷却変態(CCT)曲線にまとめ,MD法解析から直接CCT曲線を導出し,古典的なマクロ材料学と原子スケール解析との関連性について考察した.これらの結果を雑誌「Chemical Physics Letters」で発表した. さらに,MD法とForce biased Monte Carlo法を組み合わせたハイブリッドアルゴリズムをベルギーアントワープ大学と共同で開発し,触媒金属微粒子からカーボンナノチューブ過程が生成される際のグラファイト格子欠陥緩和(アニール)過程を考慮し,カイラリティを特定でき得る欠陥のないキャップ構造生成過程を実現した.これらの結果を雑誌「ACS Nano」で発表した.
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