研究概要 |
本研究では,分子動力学(MD)法解析により,触媒金属微粒子内の結晶方位及び局所融解状態の分布がカーボンナノチューブカイラリティ決定にどのように影響を与えているかを解明し,カーボンナノチューブカイラリティ制御触媒金属微粒子の最適構造設計を行うことを目的としている.平成23年度は,グラファイトと金属稠密面の相互作用エネルギーの方位関係(Orientation relationship,OR)依存性を系統的に計算し,Ni(111)面とグラファイト相互作用について,グラファイト六員環中心とNi(111)最表面原子が同軸にならぶエピタキシャル構造が特異的に最安定となり,最安定構造から数度回転させた非整合界面では相互作用がほぼ一定となることを確認した.これより,カーボンナノチューブ生成過程において,触媒金属表面上のNi(111)面の分布がグラファイト成長方向に影響を与えるとの結論を得た.この結果を雑誌「Chemical Physics Letters」に投稿しAcceptされた(平成24年4月). さらに,触媒金属微粒子安定相の冷却速度依存性を計算し,冷却速度が十分遅い場合は単結晶微粒子,冷却速度が大きくなると多結晶微粒子になり,単結晶/多結晶閾値は微粒サイズが大きくなるにつれ遅くなることが分かった.この結果を「Journal of Thermal Science and Technology」で発表した.
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