研究概要 |
平成23年度は,当初計画に基づいて導電性フィラーを含有する高分子系複合材料に対する導電性付与の検討を進めた.しかし,炭酸ガスレーザー照射により発生する分解ガスのために材料表面が多孔質となり,平滑な表面を得ることは困難であった.本研究ではバルク成形体の表面に導電領域を形成することを目指しており,この問題は導電領域のパターン化に際して大きな障害となる.そこで,年度後半に付加的に検討予定であった「金属ナノ粒子インク」を利用した導電層を高分子材料基材上に形成することを中心に検討を進めた. 検討では金属ナノ粒子インクとして,銀ナノコロイド水分散液(銀20 wt.%,水80 wt,%)と銀ナノコロイド導電膜形成用インク(銀10 wt.%,水30 wt,%,エタノール54 wt,%,メタノール6 wt.%)を用いた.また,樹脂基板として厚さ1mmのアクリル樹脂を採用し,基板へのインクの塗布はスピンコートにより行った。ただし,アクリル板にインクを塗布する際,表面の濡れ性を向上させるためにコロナ放電装置による前処理を行った。得られた試料を直動ステージに固定し,炭酸ガスレーザーを走査することで直線状のパターン形成を試みた.また,形成された膜の状態を電子顕微鏡により詳細に観察した.比較のため,ガラス基板に塗布した銀ナノ粒子インクについても同様の検討を行った.アクリル基板の場合には,その耐熱性がガラス基板より低いため,形成された導電層も不均一となり得られた電気伝導率も相対的に低くなった.検討した範囲では,アクリル基板に対するレーザー照射による導電パターンの形成条件として,走査速度20mm/s,ふく射強度240W/cm^2において36×10^<-8>Ωm(銀バルク体の約23倍)の電気伝導率を有する直線状のパターンを基板表面に形成することができた.
|