平成22年度は、InPポーラス構造を基盤とする化学センサを試作しその動作実証を行った。 1.ポーラス型化学センサの作製プロセスを確立した。p形InP基板にエピタキシャル成長したn形InP層に、電気化学的手法によりポーラス構造を作製し、その上面にソース-ドレイン電極を形成する。また、ポーラス構造形成時に用いたp形基板裏面の給電用電極は、バックゲート電極として再利用する。ソース-ドレイン電極形成のためのリソグラフィ工程において、ポーラス構造にフォトレジストを直接塗布することは困難であるが、今年度はこの問題に対して、SiO2膜などの絶縁膜により多孔質面を保護することにより解決し、孔の径:150nm~650nmのポーラス構造に対して、電極を形成することに成功した。 2.作製したポーラス型化学センサの基本性能を明らかにした。電解液中のpH変化(4.0-6.0)に対して、検出電流(ソース-ドレイン電流)は線形的に変化し、その検出感度は、バックゲートに印加する電圧により増減することを明らかにした。参照用プレーナ型センサと比較してポーラス型化学センサでは、最大で43倍の検出感度を達成した。上記1と2の結果をもとに、「センサ及びセンサの製造方法」として特許出願した。 3.ポーラス型化学センサの検出感度の向上に向けて、ポーラス構造の電気伝導特性を明らかにした。孔と孔の間に残されたInPの孔壁は電気伝導特性を示し、光照射下において光電流特性を示すことを明らかにした。また、p形基板上に形成されたn形InPポーラス構造の電流-電圧特性は整流性を示し、その理論解析を行った結果、ポーラス型化学センサのバックゲートによる検出感度特性の増減が、pn接合の逆方向電圧印加時の空乏特性により説明可能であることを示した。
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