平成22年度までの研究成果に基づき、一方向発振リングレーザの高性能化、特に小型化と低動作電流化を目指した。小型化と低動作電流化は光情報信号処理の低動作電力化のために重要である。 以下の二つの研究アプローチを採用した。(1)リングレーザの光の入出力導波路として、従来の方向性結合器に変えてY分岐導波路を導入した。(2)リング共振器を形成する導波路をハイメサ導波路に変更することで横方向の光閉じ込め効果を強くし、リング共振器の曲げ半径を従来の0.5mmから0.1~0.3mmとした。平成23年度は曲げ半径を0.1~0.3mmとしたリングレーザの作製プロセスを確立した。しかしながら得られた光出力は最大で-40dBmであり、平成22年度までに作製した方向性結合器を光入出力導波路に用いたリングレーザの光出力-20~-30dBmを下回った。原因は、リング共振器をハイメサ導波路で形成し、半導体活性層をエッチングしたことで、発光効率(内部量子効率)が低下し、当初期待した曲げ損失の向上の効果を相殺したことが挙げられる。Y分岐導波路の合流部には原理損失が3dBあり、光利得が導波損失やY分岐導波路の原理損失を補償することができなかったことが光出力の低下の原因として挙げられる。 また、光注入同期による非相反半導体レーザの発振状態の制御に成功した。非相反半導体レーザに外部から光信号を導入し、注入同期が生じる条件(発振波長と外部注入光の波長/光強度)を明らかにした。発振波長と外部注入光の周波数が28.4GHz離れた(離調)時でも注入同期を実現した。離調が大きいと、半導体レーザの発振状態を制御するための入力光波長の許容度を大きくすることができ、光情報信号処理への応用に有用である。 以上の研究成果は1件の査読付論文(英文)、3件の国際会議論文、1件の招待講演を含む5件の国内会議論文として発表した。
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