研究概要 |
現在,脳梗塞などの重篤な疾患は,動脈硬化病変の破綻によって形成された血栓が内腔を閉塞することにより発症すると言われているが,従来の画像診断装置により病変の形状や大きさを測定するといった静的特性の評価では易破裂性診断は難しい.本研究では,病変の易破裂性診断など,動脈硬化症診断のための血管動態の高精度計測法・システムの研究開発を行う.本年度は,心拍にともなう動脈壁の2次元変位の高精度計測方法に関する研究を行った. 従来の2次元変位計測法として,超音波信号のパターンマッチング法が挙げられるが,この方法は基本的に超音波信号の標本化間隔に依存する.本研究では血管動態の高精度計測のため,従来の超音波イメージング法(フレームレート数十Hz)に比べはるかに時間分解能の高い計測を行うため(1kHz以上),フレーム間の動脈壁変位は超音波信号の標本化間隔に比べ非常に小さくなり,これをパターンマッチングで計測するためには,超音波信号に対して非常に多くの補間を行う必要があり実用的ではない.特に,超音波信号は横方向の分解能が垂直方向に比べ一般的に低く,横方向変位の高精度計測が難しい.そこで本研究では,超音波信号の位相を用いることで,動脈壁の横方向変位を,超音波信号の補間なしに高精度に計測できる手法を開発した.模擬血管(シリコーンゴム管)を用いた基礎実験により精度評価を行ったところ,従来法(誤差70.8%)に比べ大幅に精度を改善(誤差6.1%)することができた.
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