研究概要 |
研先の目的 micro-TAS(Micro-Total Analysis Systems)を構成するマイクロ流路内を流れる検査用液の物質濃度分布,イオン分布,反応拡散分布を観測することが可能な高分解能テラヘルツ(THz)波ケミカル顕微鏡(TCM : Terahertz Chemical Microscope)を開発する.さらに,実現したTCMを用いて,マイクロ流路内のイオン輸送を計測・制御する.これにより,micro-TASを用いた高精度検査・検出が可能になる.さらにマイクロ流路内イオン輸送ダイナミクス解明へも寄与する. 研究の成果 まずは,実施計画に基づき,電磁界シミュレーションによるセンサチップからのTHz放射特性について評価を行った.その結果,計測における空間分解能は,半導体層が薄くなればなるほどよくなることが分かったが,THz放射強度は弱くなるため,信号・雑音比の低下が起こることが分かった.本研究で使用した中心波長800nmのフェムト秒レーザーでは,膜厚600nm程度の半導体層が最適であることが分かった.しかしながら,今回,micro-TAS計測を最終目的とする本研究では,より空間分解能に重点を置くことを考え膜厚150nmの半導体層を用いた.その結果として,実際の評価実験において,空間分解能50umでの化学ポテンシャル計測に成功した.この空間分解能は,一般的な・-TASを構成する流路を評価するには十分な値である. さらに,センサチップからのTHz放射特性を評価するために,センサ表面にチタン電極を作製することで,センサに対して電圧を印加することを可能とした.さらにセンサチップから放射されるTHz波の強度は印加電圧に依存することが分かった.さらに,THz波の周波数成分は変化しないことが分かった.このことは,本研究で開発したセンサチップの放射機構は,半導体内部の空乏層電界によるものであることを示唆している. 計画以上の成果としては,上記成果を発展させ,実際にPDMSで作製したmicro-TASとセンサチップを組み合わせた構造の作製に成功し,さらに,作製した流路中の溶液のTHz波による観測に成功した.
|