1.斜面の無線センサーネットワーク機器の機能、信頼性の向上 屋外の実斜面で長期間の試験モニタリングを行い、高温、低温、風雨の中での長期耐久性、計測の信頼性を検証した。試験サイトとしては、中央開発(株)、(独)土木研究所、中国科学院の協力を得て、六甲の砂防工事斜面、愛媛の道路法面、高知の砂防工事における掘削斜面、中国四川省都江堰市塔子坪の大規模地すべり地域での試験計測を行い、その機能を検証した。中国など海外での利用を可能とするために、各国の電波法規に適合する無線モジュールの選定と技術的検討を行い、機器を改造した。また、短距離用の安価な無線モジュールを用いたセンサーユニットを新たに開発し、これまで作ってきたセンサーネットワークに接続することで、斜面内の重点箇所に多数のセンサーを設置して監視する仕組みを試作した。 2.斜面変位と土壌水分量の組み合わせモニタリングによる豪雨時の斜面崩壊の危険度評価法の提案 本研究で開発した機器を用いて、降雨時に、斜面の変位と土壌水分量を測定し、両者のデータを組み合わせることで、リアルタイムで斜面崩壊の危険度を評価する手法について検討した。斜面上のすべり層を模擬した模型実験で、降雨と排水が繰り返される場合の斜面変位の生じ方を観察し、両者の関係を考察した。土壌水分量と変位の間には、降雨の履歴にかかわらず、地盤材料の力学試験における応力とひずみの関係によく似たユニークな法則が見いだされた。この考え方に基づいて、斜面の土壌水分量(または降水量)と斜面の変位のモニタリングデータを組み合わせることで、斜面の状態をより的確に把握し、危険度を評価しうることを示した。
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