研究課題
平成21年度は、世界の山岳氷河の質量変化を算定できる全球0.5度グリッドの氷河モデルの開発を行った。また、モデルの入出力データとして、全球0.5度グリッドの地表気象データセットを、観測データの収集・整備ならびに、統計モデルと経験式モデルを用いたダウンスケーリング手法を組み合わせることにより作成した。このデータセットは、1948年から2007年の60年間の日単位の降水量と地表気温である。降水量に関しては、地域ごとの降水観測に用いられる雨量計のタイプを勘案し、風速データを用いて、降雨・降雪別に捕捉率の誤差の修正を行った。このことを行うことで、雪氷圏において顕著であった、観測降水量における降水量の過小評価を補正することができた。これらのデータを用いた過去60年間の氷河シミュレーションを世界で得られる約100地点の氷河質量観測データと比較した結果、作成したモデルが比較的妥当に氷河質量の長期的な変化を再現できていることが示された。特に、アジアのヒマラヤ地域において、氷河質量の現地観測データ、重力衛星による地上の貯水量変動データから推定した氷河質量変化、本課題のモデルによる算定値の三者を比較したところ、モデルで算定した氷河の質量変化が定量的にも既往の氷河質量の変化量を算定できていることが明らかになった。今後は、このモデルを用いた将来の気候変動下における氷河質量の変化を算定すると共に、世界の氷河の質量変化が河川流量、特に低水期の渇水などに与える影響について解析する必要がある。
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Water Resources Management (online)
Mitigation and Adaptation Strategies for Global Change (掲載確定)