研究概要 |
近年,都市空間において,交通や各種イベントによる混雑・密集解消のため,ダイナミックに時々刻々と変動する人々の流動を日常的に把握する必要が出てきており,真の社会インフラとして根付くためには,「人の流れ」に関するデータが,部分的なエリアだけでなく全国さらには国際的なベースでの取得・利活用ができるようなスケーラビリティに関わる量的な検討と,各種人の流れに関する多様かつ断片的なデータを組み合わせて,さらに時空間的な再現精度を上げていく質的な向上に関する検討が必要である.本研究では,最終年度として様々な成果がでてきた.まず,コアである「人の流れデータセット」の作成方法等を記した研究が世界的にも広く読まれているIEEE Pervasive Computingに掲載されて大きな成果となった。これはImpact factorも3.08(2009)と大変高い.また,このパーソントリップデータをベースとする国内の人の流れデータセットのアーカイブが15都市,延べ350万人にのぼり,申請者の所属する空間情報科学研究センターの共同研究の仕組みを通じて,交通,まちづくり,医療,防災,セキュリティ等,公益に資する分野で多くの研究者に利用された.さらに,海外でも途上国を中心としたJICAのパーソントリップデータを用いて海外データのアーカイブも行った.これらの,データ処理を行う動線解析プラットフォームについても,それらが提供するWebAPIやその標準的な応答速度,データベースの仕組み等が,土木学会論文集F3(土木情報)に掲載され,大規模時空間データ処理の成果を公表できた.こうした活動をもとに,我々は次のステージとして,よりリアルタイム・大規模・長期のデータとして,携帯電話のGPSやCDR(Call Detail Record)への期待に関する解説記事「携帯電話を活用した人々の流動解析技術の潮流」が,国内誌では会員数が大変多い「情報処理」に掲載された.
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