研究概要 |
微生物(原虫,細菌,ウイルスなど)を用いた水処理実験を行う際には、実験に先立ち、対象微生物を培養し、大量のストックソリューションを作成する必要がある。ところが、ノロウイルスは、これまで多くの努力が払われてきたにも関わらず、未だ細胞を用いた培養が確立されておらず、ウイルスの大量培養ならびに添加実験が極めて難しい状況にあるのが現状である。近年、培養不能なノロウイルスの構造や抗原性を調べるため、ウイルス外套タンパク(VLPs : Virus Like Particles)を遺伝子組換え生物を用いて発現させる手法が確立された。また、発現されたVLPsを用いることによりノロウイルスの酵素免疫測定法が開発され、現在では検出キットが市販されるようになった。本研究では、VLPsを用いてノロウイルスの室内水処理実験を行うことを目的とした。 本年度は、ウイルスの超微粉化活性炭への吸着性を調べた。その結果、ウイルスを吸着することのできる活性炭と、できない活性炭があることが分かった。この差異は、(1)活性炭の表面電位が異なること、(2)活性炭表面に40~100nm程度の細孔が存在するか否か、に依存する可能性が示された。また、1時間の接触でウイルスが1log程度除去できることが分かった。現行の水処理ではウイルスは活性炭の除去対象とは考えられていないが、カビ臭抑制などの主目的の他にも、副次的効果としてウイルス除去にもいくぶん貢献していることが示された。
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