研究概要 |
昨年度は、遺伝子組換え技術によりノロウイルスVLPを発現させ、その形状,サイズ,比重などが野生ノロウイルスと同様であることを確認した。また、このVLPを用いて、凝集-沈澱-砂ろ過という一般的な浄水処理プロセスでのノロウイルスの処理性をベンチスケールの室内実験により世界で初めて評価することに成功した。しかしながら、昨年度に用いたVLPの定量法(市販のキットを用いたELISA法)では感度不足であるため、室内実験設備に添加するVLP濃度が、実処理施設に流入すると予想される濃度より遙かに大きい値での実験しか行うことができなかった。本年度は、浄水処理過程におけるウイルスの処理性を評価する目的で、ノロウイルス外套タンパク粒子(VLPs)を使用した実験を行っているが、検出系のELISA法の代替となるimmuno-PCR検出系を構築した。外套タンパク粒子は内部にRNAやDNAを持たないため、検出用の抗体にタグ配列を結合し、PCRによる高感度検出を目指した。抗原抗体反応を行うプレートの形状の影響排除、反応プログラムの至適化、制限酵素EcoRIによるタグ配列の分離回収、プライマー濃度等組成の至適化を行った結果、10^<10>~10^<12>VLPs/mLで濃度依存性が観察された(図7)。この範囲内でVLPsのimmuno-PCRによる定量が可能となり、ELISA法と同等の感度に達した。使用する抗体等の最適化を進めることで、さらに感度向上が期待された。
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