研究概要 |
昨年度までに、遺伝子組換え技術によりノロウイルスVIP(ノロウイルスの外套タンパク粒子)を発現させ、その形状,サイズ,比重などが野生ノロウイルスと同様であることを確認した後、凝集―沈澱―砂ろ過でのノロウイルスの処理性をベンチスケールの室内実験により世界で初めて評価することに成功した。しかしながら、これまで用いてきたVLPの定量法(市販のキットを用いたELISA法)では感度不足であるため、室内実験設備に添加するVLP濃度が、実処理施設に流入すると予想される濃度より遙かに大きい値での実験しか行うことができなかった。本年度は、検出系のELISA法の代替となるimmuno-PCR検出系を構築した。外套タンパク粒子は内部にRNAやDNAを持たないため、検出用の抗体にタグ配列を結合し、PCRによる高感度検出を目指した。抗原抗体反応を行うプレートの形状の影響排除、反応プログラムの至適化、制限酵素EcoRIによるタグ配列の分離回収、プライマー濃度等組成の至適化を行った結果、10^5VLP/mL程度まで定量が可能となった。これにより、これまで用いてきたELISA法の1,000~10,000倍の高感度でノロウイルスVLPを定量することができるようになった。この手法を用いて、MF膜,UF膜,凝集―MF膜処理でのノロウイルスの除去性を調べたところ、以下の知見を得た。(1)分画分子量1kDaのUF膜を使うと、ノロウイルスを4log除去できた。(1)孔径0.1umのMF膜ではノロウイルスは除去できなかったが、PACIを用いた前凝集処理を行うことにより、分画分子量1kDaのUF膜と同等の除去率が得られた。(3)大腸菌ファージQβもMS2も、MF膜,UF膜,凝集―MF膜処理でのノロウイルスの代替指標として用いることはできないと判断された。
|