研究課題
次世代の下水処理技術として膜分離活性汚泥法(Membrane Rioreactor, MBR)がこれまでも注目を集めてきたが、膜ファウリングに伴う高コストが阻害要因となってMBRは普及していない。MBRにおける膜ファウリングはタンパク質等の細胞外代謝産物により引き起こされるというのが通説となっているが、既往の研究のほとんど全てが代謝産物の量を包括的に把握することにより膜ファウリングの発生を考察するものにとどまっている。この結果として、「どのような」有機物がMBRにおける膜ファウリングを引き起こしているのか、という点に関して現時点における情報および知見が決定的に乏しく、効果的な膜ファウリングの抑制を実行するのにはほど遠い状況となっている。本研究では生化学分野において確立された技術であるプロテオーム解析およびナノテクノロジー分野において注目を集めている原子間力測定を導入して、膜ファウリングの原因となる物質に関する情報を飛躍的に充実させることを目的とするものである。21年度において、パイロットスケールMBR槽内より採取した有機物および閉塞膜からアルカリ抽出しだ有機物を対象としてプロテオーム解析の第一段階として必要となるSDS-PAGEの適用を検討した。SDS-PAGE分析にあたり、生化学分野で一般的に用いられている手法の適用ではスメアなバンドが出ることを確認し、限外ろ過による精製とエタノールを用いた分別沈殿がSDS-PAGEの適用にあたり有効であることを見いだした。また、膜ファウリングを引き起こす糖および糖タンパク質に関する情報を得るため、レクチンアフィニティークロマトグラフィーの適用可能性を検討した。MBR槽内中に存在する糖類を分画し、ファウリングポテンシャルの高い糖類画分があることを確認した。これらの結果は、MBRにおいて膜ファウリングを引き起こす特定の有機成分を決定するために有用な知見を含むものである。
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Water Research 43
ページ: 5109-5118
環境工学研究論文集 46
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