MBRをより広範に普及させるためには膜ファウリングの抑制が重要である。膜ファウリングを抑制するためには、膜ファウリング発生機構を正確に理解することが不可欠であるが、そのためには膜ファウリングを引き起こしている物質(膜ファウリング物質)の特性を把握することが重要である。既往の研究において、タンパク質がMBRにおける主要な膜ファウリング物質であることが報告されている。しかし、現段階においては具体的にどのようなタンパク質がMBRにおける膜ファウリングの発生に大きく寄与しているのかは明らかになっていない。 2次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(2D-PAGE)はタンパク質の分離・分析に非常に有用な手法である。2D-PAGEにおいては、試料に含まれるタンパク質は各々のタンパク質の分子量と等電点に基づいて分離される。本手法を用いて活性汚泥懸濁液中に含まれるタンパク質及び膜ファウリングの発生に寄与しているタンパク質を解析することによってどのようなタンパク質が膜ファウリングの発生に大きく寄与していたのかを検討することが可能である。本年度は、実都市下水を処理するパイロットスケールMBRの連続運転を行い、運転期間中に採取した汚泥中有機物と運転終了時に閉塞膜より抽出した膜ファウリング物質の2D-PAGE分析を実施し、膜ファウリングに大きく寄与しているタンパク質の性質について検討を行った。 SRTの異なる2種類のMBRについてファウリングに関与するタンパク質性質の検討を行った結果、膜ファウリング物質中において存在割合が大きいタンパク質の性質は異なることが明らかになった。また、本年度の結果により、2D-PAGEを用いて膜ファウリングに関与するタンパク質の分離が可能になった。
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