研究概要 |
成果1:セメント硬化体中の含水量変化によって生じる体積変化が,水和生成物(セメントと水が反応することによって生ずる化合物)と水との相互作用力に起因する分離圧であることを実験的に明らかにし,ヒステリシス(脱水と吸着プロセスにおいて,含水量が一緒にならない現象)における体積変化についても合理的に説明できる新しい概念,Hydration pressure theoryを提案した。 成果2:上記,概念に基づき,セメント硬化体の体積変化を抑制すると経験工学的に理解されていた収縮低減剤の収縮メカニズムが,水和生成物表面に親水基によって吸着が生じ,疎水基が水の吸着の邪魔をするため,結果として平均的な表面-水間の相互作用力が小さくなる(正確には,減衰が大きくなる)ことによって生じることを理論的に明らかにした。 成果3:セメント硬化体の若材齢体積変化について,線膨張係数の経時変化によって生じる温度ひずみという,従来になかった体積変化メカニズムを発見し,特に高炉スラグ微粉末を用いたコンクリートが,これによってひび割れ発生を生じやすくなることを,実験と理論の両面から明らかにした。 成果4:このような,線膨張係数の経時変化が生じる理由は,内部の含水率の減少によってもたらされることに着目し,含水軽量骨材を用いて,セメントの水和が進行した場合,水分供給を行って,含水量を保持することで,線膨張係数の経時変化を抑制して,ひび割れ低減を有効に行えることを実験的に検証した。
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