木質構造は、伝統的な建築物において超長期に使用した実績を持ち、またCO2削減の問題においても都市の森などと言われて注目されている。このことより、木質構造の長期使用への取り組みは重要な検討課題である。特に、一般の建物における長期使用について考える必要があるが、生物劣化による木材の耐力低下の評価は実に曖昧であり、工学的判断には至っていない。 そこで、腐朽と蟻害に着目をして、生物劣化の程度を判定するためのデータベースの構築を自指し、劣化の程度と残存宅力の関係、生物劣化を診断する機器の結果と強度の関係を明らかにすること、それぞれの診断機器同士の関係を明らかにし、機器ごとの特性(腐朽の診断に強い、蟻害の診断に強いなど)をわかりやすく評価すること、どの程度の残存耐力があるのか、補強できるレベルか、取り替えるべきレベルかを判断する基準を提示することを目的として実験を開始した。 本年度は、スギ・トドマツを用いて再腐朽(オオウズラダケ)とシロアリによる生物劣化を受けた材料を1/4サイズで行い、データの蓄積を計うた。その結果、材料レベルでは小さな生物劣化の程度であっても、強度的には大きな低下が見られることがわかった。劣化診断機器においては、どの機器においても小さい劣化の程度を判断することが難しく、もう少し機器について検討する必要があることがわかった。今まで劣化の程度と相関が高いと考えていた容積密度においてもそれほど高い相関は見られず、樹種による違いがあるかもしれないと言うことがわかった。今後、引き続きデータの蓄積を計り、接合部などの耐力に関するデータの蓄積も計りたい。
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