木質構造の根幹をなす木材およびそれで構成された接合部が、生物劣化(特にシロアリと褐色腐朽菌)を受けた場合に、どのくらい残存強度があるのかについて実験的に検討した。また、本試験を行うために重要となる実大レベルの材料における強制的な生物劣化方法がほとんど提案されていないため、その部分についても新に検討した。加えて、一般的に生物劣化の度合いを評価する方法として用いられている機器や手法についても、検討した。 その結果、以下のことが明らかとなった。 1.生物劣化を受けた木材の曲げ、圧縮、部分圧縮の強度特性と、生物劣化の評価指標として用いられる超音波伝播速度(Dr.Wood)、打ち込み深さ(ピロディン)、容積密度(元の断面に対する現在の重さを用いて求めた密度)、に関するデータを蓄積した。その結果、部材レベルではどの診断方法も評価できるものののその精度については、部材の大きさや計測方法によって違いがあることがわかった。非破壊と言う意味では、全般的に超音波伝播速度が優れており、圧縮強度においては打ち込み深さの計測が最も優れていることがわかった。 2.生物劣化を受けさせる方法、特に、シロアリであればフィールドにて食害させる方法、腐朽処理であれば恒温室だけでなく大気化においても活用できる方法を提案し、実際に劣化を与えることが出来た。特に強制腐朽処理については試験の反力部分を損なうことなく腐朽を促進させる方法を提案し、実際に多数の実験を行うことができた。ただし、より大きな劣化を与える方法を検討する必要が残されている。 3.接合部部分にシロアリ食害を受けた・腐朽処理を施した実大の試験体の作製に成功し、その強度特性を調べた。その結果、強度に大きく影響を与える部分が損傷していない場合は、それほど大きな耐力および剛性低下しない傾向を明らかにした。また、腐朽による損傷の場合は、打ち込み深さ計測にて、30mmを超える値を得られた試験体は、残存耐力が大きく減少していることがわかった。
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