本研究は、地域住民や行政担当者、地元産業界、環境NPO関係者といった地域のステイクホルダーの参加のもと、将来の持続可能な都市に向けて合意可能なシナリオ作成を可能にするディスカッションツールを開発することを目的としている。 オランダの環境技術に関するディスカッションツールであるDCBAメソッドは、環境共生団地として名高いニューランドやエコロニアの開発に活用され大きな成果を上げている。そこで本年度はこのDCBAメソッドを日本版にアレンジし、これを用いて対象都市における複数回のワークショップを行い、結果を踏まえて漸次改良していくという方法を採った。 本年度の研究成果として、以下のような点が挙げられる。 (1) DCBAメソッドの日本語化と日本技術水準での改訂 DCBAメソッドの開発者であるデルフト工科大学名誉教授ケース・ダウフェスタイン氏を招聘し、手法の開発プロセスや活用事例の紹介、日本型アレンジに際しての留意事項など、助言を頂いた。これを踏まえDCBAメソッドの日本語化と日本技術水準での改訂を行った。 (2) DCBAメソッドの、市民の議論スキルを考慮した改造 作成した手法を用いて、地域のステイクホルダーの参加のもと全4回のワークショップを行った。参加者には毎回、手法の理解度や意識の変化などについて事前・事後のアンケートを行い、これを踏まえDCBAメソッドの市民の議論スキルを考慮した改造を行った。 (3) 持続可能な地域像の作成に向けた協力者の発掘 研究グループは、本庄市の環境NPO団体主催の植林活動・農作業などへ参加し、会場でチラシの配布などワークショップの広報を行った。こうした活動を通し環境に対する関心の高い市民を協力者として発掘することができた。また、ワークショップの参加者からは手法に対する高い支持を得、大半の参加者に全4回を通し続けての参加協力を得た。
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