研究概要 |
中期の入院・通院生活を送るこどものための療養環境を,こどもや家族の視点に立って構築することは喫緊の課題である.本研究では,長期の加療を必要とする小児医療を実施する小児病院,小児病棟において,観察調査やアンケート調査,インタビュー調査等によって,患児本入,付添家族,病院スタッフの視点から,小児の療養環境を評価する基準を導出する.またこの基準をもとに,全国の小児に関わる医療機関にアンケート調査を行い,この基準の検証を行うことを目的とする.本研究の成果は,病院関係者への療養環境への意識と理解を深め,療養環境構築に関する手法や理念を複数医療機関や他職種間で共有することや,小児の療養環境の向上に寄与するものと考える. 本年度は,昨年度の調査研究成果の発表およびこの成果に基づく全国アンケート調査の準備を進めた.また,研究成果を活かした療養環境の提案をある病院の改築を期に行った.さらに,病態が異なることで必要とされる療養環境が異なることを念頭におき,開放/閉鎖,外部空間の条件等の療養環境が異なる3つの児童精神科病棟において,スタッフへのアンケート調査,キャプション評価法による環境評価調査,ラダーリング・インタビュー調査,観察調査を行った.この結果を基に,病態や入院加療の内容や目的が異なる小児病棟における環境への評価の実態を把握し,患児の病種・病態・入院期間・性別・年齢等の属性による,環境評価の対象や評価の視点,環境評価の構造などについて分析し,それらを踏まえて療養環境として求められる事柄や性能を探った.この成果を元に,児童精神科病棟での環境評価項目を試論として示した. 次年度には,これらの評価項目および実地の環境改善実践の検証を行うことを予定している.
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