研究課題
平成21年度に、KBミラーによって形成される高フラックス密度の硬X線を利用した回折顕微法を開発し、高分解能化を達成した。今後、更なる高分解能化を目指す上で注意しなければならないのは、分解能がX線波長に近づくにつれて、試料厚さが重要な役割を果たすということである。平成22年度は、試料厚さの効果を考慮し、回折パターンのチルトシリーズデータ収集に基づく高分解能回折顕微法を実証し、さらに金属ナノ粒子のナノ組織解析に応用した。コヒーレントx線回折パターンの測定は、SPring-8のBL29XULにて行った。試料には、形状制御法によって合成された銀ナノキューブ粒子および金銀ナノボックス粒子を用いた。SiNメンブレンで支持した孤立ナノ粒子を集光点に配置し、前方散乱強度をCCD検出器にて測定した。厚さ約150nmの銀ナノキューブ粒子を最大散乱角度約3degで測定した結果、試料厚さの効果に由来する非対称な回折パターンを観測した。さらに、試料を入射X線の方向に対して水平・垂直方向にそれぞれ±1degの範囲でチルトさせ、各角度で回折パターンデータを取得した。そしてそれらをつなぎ合わせ、qz=0面内の回折パターンを導出し、位相回復計算を行った結果、エッジ分解能2nmを有する投影像を再構成できた。金銀ナノボックス粒子については、-75degから+72.5degの範囲を2.5degステップで走査して、合計60枚の回折パターンデータを取得した。位相回復した結果、ボクセルサイズ4.2nmで金銀ナノボックス粒子の三次元電子密度分布像の導出に成功した。等電子密度像には、反応初期過程に見られる表面の小さな穴や窪みが見られた。また、断面像を調べると中空構造が鮮明に可視化され、電子密度分布から粒子の角に金原子の多く含まれる領域が局在していることが分かった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A : Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
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http://www.wakate.frc.eng.osaka-u.ac.jp/takahashi/