前年度に引き続きRFマグネトロンスパッタリング装置を用い、ターゲットにCuとAlを用い、装置内にArと酸素ガスを導入した製膜でCu_2O/Al_2O界面を作製し、界面におけるCuの価数制御を試みた。Cu_2O上にAl_2O_xを製膜すると直ちに表面のCuが1価から2価になる。このため、Al_2O_x上へのCu_2O製膜を試みたが、この場合でも成長初期のCuが2価であることが明らかとなった。Cu_2O単相ができる条件で製膜しているにもかかわらず界面においてCu^<2+>の存在がXPSにおいて確認できたため、Al_2O_xの影響を危惧した。そこで、Cu_2O上今のCu_2Oの製膜を行い、Cuの価数変化をXPSのその場観察により調べたところ、この場合でも成長初期のCuが2価であることが明らかとなった。つまり基板が何であれCu_2Oは成長初期にCu^<2+>が生じることが明らかとなった。これらの結果は界面作製のためにCu_2O上へ絶縁層を製膜しても、絶縁膜上にCu_2Oを製膜しても界面近傍にはCu^<2+>が存在することを示しており、Cu_2Oを含む半導体素子特性劣化の原因の一つがここにあると強く推察される。ターゲットに金属を用いて酸化物薄膜を製膜する場合はプロセスガスから酸素を得る必要があるが、プラズマ中の酸素の酸化力が強すぎることが原因と考えられる。前年度までの研究で海面付近のCu^<2+>はポストアニール処理で完全に還元してCu^+とすることが難しいことが明らかになっているので、この問題を解決するためには、酸素ガスを導入せず酸化物ターゲットを用いて製膜することなど、酸化雰囲気を抑えた条件下で高品位Cu_2O薄膜の作製方法を確立に懸かっていると考えている。ここで明らかとなった成果はSTAC-5や日本セラミックス協会秋季シンポジウム等で発表し、論文投稿のための準備を進めている。
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