研究概要 |
希土類系高温超伝導線材の強磁場マグネット応用において最も基礎的なデータは,臨界電流の一軸歪依存性である。希土類系高温超伝導線材は金属基盤上の多層膜構造であり,超伝導層厚は1-2μmである。従って,数mm厚のビームに貼付けて曲げ歪を与えても,超伝導層内の歪分布は無いと近似できる。この性質を利用して,昨年度製作した4点曲げ式極低温強磁場歪印加装置を用いて希土類系高温超伝導線材の臨界電流-歪特性を調べた。温度は液体窒素温度(77K)とし,通電電流は最大200Aまで,印加磁場は最大10Tまでとした。 試料として用いたのはCVD法によって製作されたYBCO線材およびPLD法によるGdBCO線材であり,いずれも基板はハステロイC276基板(100μm厚)である。安定化材としてのCuは,前者(CVD-YBCO)では20μm厚メッキされており,後者(PLD-GdBCO)は100μm厚銅箔がハンダ付けされている。従ってCVD-YBCOはCuBe製ビーム(5mm厚)にハンダ付けしで試験を行った。一方,PLD-GdBCOはCuBe製ビームへのハンダ付けによって安定化Cu箔がはがれてしまう。そこで,SUS304製ビームに歪ゲージ接着剤M-BOND600を用いて接着し,電流端子,電圧端子付けには低温半田を用いた。 CVD-YBCO,PLD-GdBCOともに臨界電流の歪依存性が観察された。また,その歪依存性は磁場によって異なることもわかった。一方,GdBCO線材については臨界電流の温度依存性についても測定し,77K,0Tで261Aであり,線材面に垂直に磁場を印加した場合であっても4.2K,10Tで303Aの臨界電流を有することがわかった。
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