本申請課題は、バイオセンシング・微小反応場・マイクロフルイディクスで必要とされる『マイクロリットル以下の微小液滴の自在な操作』を実現するための、液滴吸着性の外場制御可能な超擬水表面の開発を目的としている。本年度は、前年度までに作製法を確立した機水性と液滴吸着性とを併せもつ高分子ピラー-金属ドームマイクロ構造化表面での特徴的な微小液滴操作を実証した。具体的な結果を以下に記す。水滴の自己組織化を鋳型として得られる直径数マイクロメートルの空孔を多数もつハニカム状多孔質フィルムの孔内へ無電解めっきにより導入した金属ドームの密度は、めっき前処理溶液の温度により制御でき、金属ドーム密度の異なる高分子ピラー-金属ドームマイクロ構造化表面を作製できる。金属ドーム密度が12%以上の構造化表面では5マイクロリットルの水滴を基板反転後にも吸着できる。めっき前処理溶液の温度を高温から低温まで連続的に変化させると、同一表面上に金属ドーム密度が0%から30%までの分布勾配を作製できた。20度に傾けた分布勾配をもつ構造化表面上のドーム密度0%の低吸着力部位に5~20マイクロリットルの液滴をそれぞれ滴下し、液滴転落挙動を観察した結果、液滴量によって吸着する位置が異なることがわかった。吸着する位置による可視的な液量分別センサーとして応用することが期待される。また、吸着した液滴は傾斜角を大きくしたり、液滴量を増加させたりすることで除去できるため、容易に清浄な構造化表面を得ることができ、繰り返し使用可能な微小液滴操作基板として用いることができた。最終年度は、液滴吸着を温度により変化させることを試み、微小液滴の外場応答による自在な液滴操作への展開を図る。
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