研究概要 |
近年,siRNAやshRNAにより配列依存に遺伝子発現抑制が起こる現象(RNAi)が注目され,遺伝子機能研究や創薬研究に幅広く利用されている.研究代表者らは最近,培養プレート上の動物細胞に対して光照射領域特異的にRNAiを誘導する技術を開発した.光で切り取る(=clip)ように遺伝子発現を抑える方法なので,この方法をCLIP-RNAi法と呼ぶことにした.本課題では,CLIP-RNAi法を最適化すると共に応用展開することを目的として、以下に取り組んだ. 1) CLIP-RNAi法で用いるRNAキャリアの最適化を目指し,本研究では元となるキャリア蛋白質(TatU1A)の改良を行った。キャリア蛋白質のN末やC末のアミノ酸配列を工夫した結果、C末に分解タグを融合させたときなどに、RNAi効果が高まることが分かってきた. 2) 本方法の汎用性を高めるため,様々な波長の光照射でRNAiを可能にする必要がある.そこで,Photosensitizer (PS)としてAlexa-Fluor 546以外にも,Alexa-FluorシリーズおよびCy-dyeシリーズで標識したTatU1Aを用い,350-680nm付近の光照射を行うことでRNAiの誘導が可能であるかを調べた.結果として、Alexa-Fluor 633やCy3などの蛍光色素をPSとしてCLIP-RNAi法に使えることがわかった. 3) CLIP-RNAi実験について,レーザー光を使うと,さらに精密に照射位置を限定できるはずである.共焦点レーザー顕微鏡のレーザー光を用いて,5x5~200x200μm程度の領域におけるCLIP-RNAiや,単一細胞(10~20μm)を狙ったCLIP-RNAiを試し、実際にこれらの微細領域におけるRNAiを引き起こせることを確認した.
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