本研究の目的は、スーパープレッシャー気球(SP気球)とゼロプレッシャー気球(ZP気球)のタンデム気球により長時間飛翔気球を実現するため、 ・実験室内実験、および、地上試験による放球方法の開発、 ・気球実験による、原理実証とつりさげ飛翔時の特性評価、 を行なうことである。 長時間(数カ月程度)飛翔できる気球が存在すれば、地球周回衛星で行なわれている科学実験の一部をこれで実現することができ、圧倒的な低コスト化が可能である。これは、SP気球とZP気球を組み合わせたタンデム気球によって理論的には実現できることが指摘されていたが、十分な大きさと耐圧を示すSP気球がなかったために実証されてこなかった。近年、SP気球の技術は飛躍的な進歩があり、原理的には実現可能な状況となっている。本研究では、特に、気球を連結して放球、飛翔させるために必要な技術開発を行い、それを踏まえて実際に飛翔させる実験を行い、飛翔時の特性を評価する。 本年度は、1.放球時の扱いを容易にする改良、2.高耐圧気球の設計、製作を行なった。1に関しては、気球の外側を強度が強い円筒状のフィルムで包み、ガスを詰めた後に解放する機構を設計し、製作した。2に関しては、菱形の目の網を気球に被せることで重量を増やすことなく耐圧性能を向上させることができることを見出し、実際に気球を製作してその実証、および、大型気球を製作する上での基礎技術の習得を行った。なお、当初、強度の強いフィルムを用いる予定であったため気球材料の放射特性の計測が必要であったが、菱形の目の網を気球に被せる手法により、通常の気球で用いられているフィルムを利用することが可能となったため、計測することなく、必要耐圧の推定を行うことができた。
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