研究概要 |
本年度において,材料中の複屈折率の二次元分布を顕微に定量できる複屈折率イメージング装置を導入した.本装置を用いて,石英単結晶に施したビッカース圧子痕を観察したところ,圧子により導入された残留応力に起因する複屈折変化を定量評価できることが明らかとなった.複屈折率変化は,結晶面方位依存性を示し,c軸を法線に持つような面に圧子痕を施した場合,リターダンス変化および速軸変化が最も顕著であった.一方,c軸と試験片法線がなす角が大きくなると,リターダンスにおいては変化が見られるが速軸の変化量は減少し,残留応力の主軸が速軸方位と一致しなくなることが分かった.圧子による負荷の大きさが98mNと微小であっても,最大4nm程度の有意なリターダンス変化が圧子痕近傍に生じることから,本複屈折率イメージング装置は,応力に起因する光弾性を観察することに適していると言える.圧子痕を中心として半径方向に圧縮,周方向に引張の残留応力場を仮定し,それを元にポッケルスによる応力場と誘電率テンソルの関係式から圧子痕まわりの3次元微小要素について屈折率楕円体を求めた.さらに観察光によって定まる高速軸とリターダンスの二次元分布をジョーンズ計算により求めると,複屈折率イメージング装置にて取得される圧子痕まわりの高速軸およびリターダンスイメージと比較的良く一致することから,光弾性より圧子痕まわりの残留応力場を求めることができる.また,本装置により石英多結晶体のc軸方位分布を迅速かっ簡便に決定できるようになった.
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