研究概要 |
当初の計画である「水中の極微量メタノールの計測システムの構築」に関する研究を,2種類の質量分析計を用いて行った.プロトン移動反応質量分析計を用いた研究では,この装置を開発しているインスブルック大学(オーストリア)に2ヶ月滞在し,溶液試料を直接注入し計測する手法の開発に従事した.水中の微量メタノールの計測は実現できたが,環境中のメタノールが大きく影響し,現在のシステムでは水中メタノールの検出限界は約10ppmwであることがわかった.本手法を用いて高感度検出を実現させるためには,環境に含まれるメタノールを減少させること,および酸素イオンの混入を減少させることが必須である.一方,ガスクロマトグラフ質量分析計を用いた研究では,ヘッドスペース法により実験をおこなった.水中の微量メタノールの計測に成功し,検出限界は0.1ppmwであることがわかった.よって,現状では後者の分析法が有望であることがわかり,装置を導入した.次に,このガスクロマトグラフ質量分析計を用い,メタンハイドレートにおいて放射線照射により生成するメタノール量の定量評価を行った.6kGyのγ線照射により2ppmmolのメタノール(メタン比)が生成することがわかった.天然試料ではメタノール量が数桁少ないと予想されるため,今後,より低濃度の試料でもメタノールを検出できるよう改善を行い,天然ガスハイドレートの生成年代の評価につながる研究を遂行していく計画である.
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